ep!dence based 代表
青木 事成 [あおき ことなり]
コロナのパンデミックはSF映画で登場する隕石や宇宙怪獣のように人類共通の敵です。たくさんの尊い命が奪われました。本来ならば私たち人類は力を合わせてこの共通の敵に立ち向かう必要があります。それにも関わらず、マスクを付ける付けない、ワクチンを接種するしない、といったことで同じ人類である私たちはわかり合えず感染症の脅威とは別の問題として社会的分断が起きています。これはどうしたことなのでしょう。
エビデンス(evidence)という言葉は以前、「証拠」と訳されていました。パンデミックの初期には「エビデンスはあるのですか?」と政策決定についての質問が批判を受けたことがあります。未曾有の出来事について証拠のある政策などあるはずがない、という訳です。これはわかりやすい指摘であり正当な批判のように聞こえますが、より正確な表現に更新した方がいいでしょう。実はエビデンスの本質は「ある/ない」ではなく、「濃い/薄い」なのです。
つまり、確かに過去に全く同じ事象が起きていないのは確かですが、別のパンデミックであれば人類は経験しています。また、今回のパンデミックについてもいち早く蔓延した他国の政策も充分、参考になるはずです。こうしたことから、緊急事態宣言やまん延防止策を日本で初めて実施するといっても、そのエビデンスは「ない」とは言い切れないでしょう。
疫学(エピデミオロジー、epidemiology)は、言うなれば医療分野におけるエビデンスを濃くするためのハウツーの学問で、1600年代におきたコレラ菌によるパンデミックから多くの人を救うために生まれました。確かに「過去と今とでは違う」「海外の政策をそのまま日本で実施してもうまく行くとは限らない」という考え方は間違いではないでしょう。その一方で、全く参考にならないかといえばそのようなことはありません。
疫学的なアプローチは複数の治療法のどちらが優れているか、というハウツーから、いまではどちらの政策が適切か(EBPM)、どちらの商品が売れるのか(A/Bテスト)まで幅広く応用されています。また、”実験”を通さずとも、蓄積されている医療データを上手に活用することで「濃い」エビデンスで判定するためのノウハウがたくさん詰まっています。
コロナの変異を防ぐことは人類として未だ良策はありません。それでも意見の食い違いによる社会的な分断を防ぐことは可能だと私たちは考えます。エピデンス・ベイスドという呼称はエピデミオロジー(疫学)の英知を利用して「濃い」エビデンスを創出したいという思いで作った造語です。ご自身や周囲の意見が食い違うとき、よかれと思って行っていることが果たして本当に正しいのか疑問をもったとき、気軽にご相談ください。
代表略歴
1991.4 | 日本ロシュ株式会社入社 |
以降、一貫して安全性部門にて 生物統計、データマネジメント業務に従事 | |
2002.10 | 戦略的アライアンスにより中外製薬株式会社勤務となる |
2011.11 | 疫学グループ新設に伴い異動、当該グループマネジャー |
2017.4 | 安全性リアルワールドデータサイエンス部の新設に伴い異動、RWDS部長 |
2022.1 | 薬剤疫学プロフェッショナル |
日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 医療情報DB活用促進TF リーダー |
日本製薬団体連合会 医薬品安全対策WT3(薬剤疫学・医療DB活用)リーダー |
レギュラトリーサイエンス財団 データサイエンス アドバイザリーボード |
民間の認定
日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家 |
日本臨床疫学会 上席専門家(2017-2021) |
日本科学技術連盟 臨床試験セミナー統計手法専門コース(6Bios)修了 |
レギュラトリーサイエンス財団 認定メディカルアフェアーズエキスパート |
レギュラトリーサイエンス財団 認定ファーマコビジランスエキスパート |
薬剤疫学関連のアカデミア活動
日本薬剤疫学会 理事・評議委員 |